建築は、生活を守るだけでなく思想や文化の象徴です。
岡山 理香 教授
経歴
県立福岡高等学校、早稲田大学第一文学部史学科美術史専修卒業。
武蔵野美術大学大学院造形学コース修了。
武蔵野美術大学副手、武蔵工業大学講師、准教授を経て現職。
/福岡市出身
工学的視点からの芸術的建築の研究
視覚芸術、とくに「建築」が研究の対象です。建築は、私たちの生活を守るためだけでなく、思想や文化を表象するものでもあります。工学的視点とともに芸術としての建築について考察しています。また、近代建築の保存活動も行っています。歴史的建造物だけではなく、住宅や商店にも目を向けて、そこで起こっているさまざまな問題についても考えていきたいと思っています。世界中、人の住まうところ建築はあります。旅先でひとときも退屈することはありません。「建築」を見ることで、人々の生きる姿をうかがい知ることもできます。国内にもまだまだ未到の地があるので、これから訪問するのが楽しみです。
建築が好きなものに
小学1年生までカリフォルニア州のサンディエゴにいたのですが、ある日の夕方、父が忘れ物をしたとかで勤めていたカリフルニア州立大学のキャンパスに行きました。車を降りて、ユーカリの並木道を歩いていると向こうに大きな建物が見えてきました。大学図書館でした。感動しました。この日から「建築」が「好きなもの」に加わりました。帰国してからは、新聞の住宅の折込み広告を集め、祖父母の家から住宅雑誌をもらってきては眺めていました。後年、この雑誌に執筆することになり、とても嬉しかったです。大学では、建築の作り手ではなく、その歴史や理論を学ぶことを選びました。
夢のために努力したこと
夢というか目標の実現に向けて、一生懸命努力しても思うような結果が出ないことがあります。そのときにどう考えるのかが大事だと思っています。そのまま諦めてしまうのか、続けるのか。私は、何度も諦めかけましました。それでも続けることができたのは、相談でき、支えてくれる人々がまわりにいてくれたからです。ある日「私は、社会で役に立っているのだろうか。」と両親に尋ねました。両親は「それは、理香が考えても仕方がないこと。いつか社会が判断してくれるものだから。」と答えてくれました。私ひとりの努力などたかが知れています。周りの人々とともに希望を持って生きていける社会の実現に向けて努力していければと思います。
マイブーム
生活のこだわり
研究をどのように社会に役立てていきたいですか?
社会に役立つ研究かどうかは、社会が判断してくれるのではないかと思います。とはいえ、近現代建築の研究が建築の文化的価値の認識を促し、歴史的建造物としての保存、活用につながっていくことで、建築にまつわるさまざまな物語も継承できていることで、少しはお役に立っているでしょうか。また、歴史研究は、実は今日の現象にも目を配っていなければできないものです。過去の建築を研究するということは、すなわちその建築が存在する(した)社会こそを対象として研究する必要があります。そうした視点で都市の防災や景観について審議する役割も担っています。今後も目の前にある社会的問題、課題にも真摯に取り組んでいきたいと思います。芸術の存在意義がどれほど認められているか、というのもその社会の安定や成熟度をはかるバロメータの一つです。みなさんに視覚芸術(建築、デザイン、美術)の魅力をお伝えし、多様な価値観があることを知ってもらいたいです。より良い社会の実現ための一つの布石となるよう研究を進めていければと思います。
若い人へのメッセージをお願いします。
道を歩くとき、周りを見てほしいな、と思います。すごく急いでいるときは別ですけれど。季節ごとにいろんな花が咲いていますし、思いがけないところにカフェや美術館があったり。それから、本をたくさん読んでください。そして、読んだ本のことを誰かに話してみてください。映画も観て、音楽にも親しんで。きっといろんな発見があると思います。どんな状況でも自分を見失わず、いろいろな経験をして、好きなもの、大事なものを見つけてください。 自分の可能性を信じて、歩いて行けるといいな、と私自身も思っています。